「失はれる物語」乙一さん


観たいと思っていた映画「きみにしか聞こえない」の原作本として本屋さんに並んでいた。
乙一さんの「暗いところで待ち合わせ」が興味深かったので手に取った。


★3つ半です!


失はれる物語 (角川文庫)

失はれる物語 (角川文庫)


表題作は右手にしか感覚がなくなった夫と右手の上で擬似ピアノ演奏をすることで意思疎通を図る妻の物語。
きみにしか聞こえない」の原作となった「Calling You」は携帯電話を持ちたいと切望する女子高生が頭の中に描いた携帯電話を操作することができるようになり、ひょんなことから北海道に住む少年と連絡を取ったが…という話。


先日も書いたが、乙一さんは現実を飛び越えた興味深いシチュエーションを創造し、そのなかで人間関係や「大切なもの」を描いていくのが得意。
また、この短編集の主人公達はすべて「心の闇」と呼ばれるものや「孤独と向き合う」あるいは「人間が生きていく際にまとう悲しみ」のようなものを抱えていた。
いろいろな気持ちが心に残る1冊でした。