美輪明宏さんが語る20代


興味のあるテーマや着まわしの参考になりそうな記事が掲載されているとき買うMORE。
そこで創刊25周年記念の特別として美輪明宏さんが語っていた。

心に響いたところを抜粋。


人間としての基本を学ぶのは、10代ですね。学校に行って
読み書きや算数を覚え、日常生活の中で食べることや着ること、
暮らし方や言葉の使い方を覚えます。
つまり10代というのはまだ人間になっていない、人間未満の時代
です。


そして20代になってようやく世の中におぎゃあと生まれ落ち、
”人間”としての第一歩を踏み出します。知性を磨き、教養を
身につけ、一人前の大人になるよう努力するのが、20代の使命。
つまり20代前半というのは10代の殻を脱ぎ捨てて大人になる、
大切な切り替え時なのです。


(中略)


20代の今、子供から大人へ切り替えることができるかどうか。
それは誰にとっても大きなターニングポイントです。
20代はきっちり将来を見据え、真剣に人生と向き合うべき時。
30代では遅すぎます。20代の今しかないのです。


(中略)


みなさんも、自分はどう生きるべきか、悩んでいることでしょう。
私のように、夢を持って決して諦めず、努力しなさいと言いたい
ところですが、大切なのはそれ以前のこと。


自分に見合う夢を見つけることです。


夢は、どんな夢でもかなうわけではありません。
いえ、それどころか、20代は挫折の連続です。夢に思い描いたものと
現実とのギャップがあまりに大きくて、めげてしまったり諦めて
しまったり、挙句の果てに世を恨み親を恨み自分を恨み、すねて
ぐれてひがんで、どうしようもない人生を歩む人もいます。


そうならないためには、自分の器を知ることです。
学生時代の成績表を見れば、自分が文科系、理科系、体育会系と、何に
向いているのかおおよそのことはわかるでしょう。
自分を客観的に眺めてみれば、自分の知能程度や肉体的素養、趣味嗜好や
性格もわかるはず。そうやって冷静に自分というものを知り、そのうえで
将来について考えるべきなのです。


冷静になってから手にした「夢」は、単なる夢ではなく「理想」に
変わります。理想を掲げて着々と生活していけば、やがて理想は「現実」
のものとなります。
きちんと自分というものをわきまえてから抱いた夢は、いつか必ず実現
するのです。


(中略)


20代のあなたたちが焦ってしまう気持ちもわかりますが、どんな努力も、
すぐに結果は出ません。重要なことほど、時間がかかります。


手早く仕上げたものは、流行に乗って、今面白おかしくもてはやされたと
しても、すぐにガラクタになってしまいます。
じっくりと手をかけて作ったものは、いつまでも古びることなく、時間が
たつにつれてどんどんステキな美術品になっていきます。
人もまた、同じなのです。


(中略)


昔の言葉に、こんな粋な言葉があります。
「恋上手、食べ上手、芸のうち」と。


たとえば焼き魚を出されて、キレイに骨だけ残して食べることが出来るのが
食べ上手。それには箸を使いこなす技術と経験が必要です。
同じように恋上手になるためにはテクニックと経験が必要なのです。


恋は人それぞれ、しかも相手があって初めて成立する問題。
「割れ鍋に綴じ蓋」で、カップルごとに恋の形はさまざまでしょう。
たったひとつ私からアドバイスするとしたら、


”大切なのは台詞”ということです。


キザな台詞や嘘くさい言葉は、必要ありません。
それより日常の暮らしの中で、気のきいた表現や印象的な言葉、相手を
幸せにする言葉が口から飛び出すようにすること。
昔の映画やお芝居を観て、勉強なさい。


ふたりの会話が弾むようになれば、相手は「この人といると楽しい」と
思います。一緒にいる時間はどんどん長くなります。


”楽しい、うれしい、幸せだ”という思いはやがて愛に変わり、ふたりの
関係を深めてくれます。台詞が愛を作るのです。


(中略)

今、20代のあなたたちの前には、長い人生が待っています。
30代、40代、50代になってどんな人生を生きているかは、今のあなたの
頑張り次第。
20代の努力が後になってものを言います。


(後略)